コピルアクはハラールか?イスラム法学の議論と、飲む前に確かめたいこと

コピルアクはハラール?ファトワの条件と見解の違いを解説

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コピルアクはハラールなのか。ムスリムの方や、ムスリムのお客様を迎える飲食店・ホテルの方から、よくいただく質問です。結論から言うと、インドネシアとマレーシアの宗教機関は、豆が一定の条件を満たし、きちんと清められていれば許されるという判断を示しています

一方で、これを認めない学者もいます。さらに近年は、檻で飼育されたジャコウネコからつくられるものについて、「良いもの(タイイブ)」と言えるのかという倫理面の問いも重くなっています。この記事では、イスラム法学の論点、各地のファトワ(宗教見解)、そして倫理の問題を順に整理します。

コピルアクとは:議論の前提となる事実

ジャコウネコが実を食べ、豆が殻ごと排出される

コピルアクは、ジャコウネコが熟したコーヒーの実を食べ、果肉だけを消化して、硬い殻(パーチメント)に包まれた豆を排出することから生まれるコーヒーです。消化の過程で豆の成分が変わり、苦味がやわらぐと言われてきました。インドネシアの農園で、地元の人々が落ちている豆を拾い集めたのが始まりとされています。

森での回収から、檻での量産へ

もともとは、森や農園に落ちている豆を拾い集める、ごく少量の産物でした。ところが価格が上がるにつれて、野生のジャコウネコを捕まえて小さな檻に閉じ込め、コーヒーの実ばかりを与えて量産する生産者が現れました。この変化が、後で触れる倫理面の問題につながっています。檻飼育の実態は、当社のブログで詳しく解説しています。

「ジャコウネコの効果」には科学的な疑問もある

ジャコウネコが良い実を選び、消化が味を良くするという説明には、専門家から疑問も出ています。たとえば2021年の論文では、これまでの分析で見られた成分の違いは、ジャコウネコの消化ではなく、糖分の多いリベリカ種の実を野生のジャコウネコが好んで選んでいたことによるのではないか、という仮説が示されています(Lachenmeier & Schwarz、2021年)。また、市場には混ぜ物や偽物も少なくありません。

イスラム法学の論点:ナジスと「清める」という考え方

ハラール、ハラーム、そしてシュブハ

イスラム法では、許されているものをハラール、禁じられているものをハラームと呼びます。その中間にある疑わしいものはシュブハと呼ばれ、できるだけ避けるべきものとされています(ハラールの解説)。食べ物は、禁じられていない限り基本的にハラールです。ただしムスリムは、単に許されているだけでなく、「ハラールで、かつ良いもの(ハラーラン・タイイバン)」を口にするよう求められています。

ナジス(不浄なもの)とムタナッジス(不浄に触れたもの)

コピルアクの議論で最も重要なのが、この区別です。動物の排泄物は、それ自体が不浄なもの、つまりナジスとされます。一方、もともと清浄なものが不浄に触れて汚れた状態はムタナッジスと呼ばれ、こちらは洗えば清めることができます。

コピルアクの豆を認める学者の多くは、豆はジャコウネコの体内を通っても本質は変わっておらず、外側が汚れただけのムタナッジスであると考えます。逆に、消化によって豆そのものが変わってしまったと考えれば、豆はナジスとなり、洗っても清めることはできません。

清めるための条件:硬く、形を保ち、発芽できること

ムタナッジスとして扱うには、豆が硬く、形を保ったまま排出されていることが前提になります。古典的な法学の議論では、植えれば芽を出すことができる状態であることが、豆の本質が変わっていない目安とされてきました。そのうえで、色やにおい、味が残らなくなるまで洗うことで、豆は清められると考えます。

ファトワはどう判断しているか

インドネシアとマレーシア:条件付きで許容

インドネシア・ウラマー評議会(MUI)は、2010年7月20日のファトワ(2010年第7号)で、コピルアクの豆はナジスではなくムタナッジスであり、清めたあとはハラールであると判断しました。対象となるのは、殻に包まれたまま形を保ち、植えれば発芽できる豆です。そのうえで、飲むことも、生産することも、売買することも許されるとしています(MUIハラール検査機関の解説(インドネシア語))。

マレーシアでも、国家レベルのファトワ委員会が同じくムタナッジスとして許容する判断を示しています。条件は、豆が穴や割れのない元の形を保ち、植えれば育つこと、そして不浄を取り除くために十分に洗うことです。さらに、販売する前にJAKIM(マレーシア・イスラム開発局)または州のイスラム評議会からハラール認証を受けることも求めています(マレーシア連邦直轄領ムフティ事務所の解説(英語))。サウジアラビアの学者が監修する質疑応答サイトIslam Q&Aも、豆が硬く、外側を洗ってあれば使ってよいという条件付きの回答をしています(Islam Q&A(英語))。

認めない立場

一方で、認めない見解もあります。シーア派の法学者のなかには、豆の構造や風味が消化の過程で変わる以上、洗うだけでは足りないとして、ハラームとする見解があります(Al-Islam.orgの回答(英語))。マレーシアでも、2010年当時のマレーシア・ウラマー協会の会長が、飲むことは禁じられているとテレビで発言しています。

判断した主体結論主な理由・条件
インドネシア・ウラマー評議会(MUI)条件付きでハラールムタナッジス。豆が殻に包まれたまま形を保ち、発芽できること。清めたあとはハラール
マレーシアの国家ファトワ委員会条件付きで許容ムタナッジス。豆が元の形を保ち、発芽できること。十分な洗浄と、販売前のハラール認証
Islam Q&A条件付きで許容豆が硬く、外側を洗ってあること。形が崩れていれば不浄
シーア派の一部の法学者ハラーム消化によって豆が変わるため、洗っても清められない

インドネシアのハラール制度:ファトワと認証は別のもの

ここで注意したいのは、コピルアクという食品全体についてのファトワと、個々の商品のハラール認証は、別のものだということです。インドネシアのハラール制度では、2014年のハラール製品保証法のもとで、宗教省のハラール製品保証実施機関(BPJPH)が認証書を発行し、MUIはファトワによって商品がハラールかどうかを判断する役割を担っています(ジェトロの解説)。食品へのハラール表示の義務化も、段階的に進められています(ジェトロの最新レポート)。

MUIのハラール検査機関は、2014年の記事の時点で、ハラール認証を取得したコピルアクの生産者はまだいないと説明していました。つまり、ファトワで許容されていることと、手元の商品がハラール認証を受けていることは、必ずしも一致しません。認証が必要な場合は、商品ごとに確認することが大切です。

「タイイブ(良いもの)」という、もうひとつの基準

動物へのいたわりを求めるイスラムの教え

イスラムの教えは、動物へのいたわりを強く求めています。自分の支配下にある動物を閉じ込めることは大きな罪であり、生き物を助けることには報いがある、という預言者の言葉も伝えられています(Sira Abdul Rahman、2017年)。

檻飼育は「タイイブ」と言えるのか

動物保護団体のワールド・アニマル・プロテクションは、コーヒーのために檻で飼育されるジャコウネコが、身を隠す場所の少ない狭い檻に入れられ、偏った餌を与えられ、同じ場所を行き来するなどのストレス行動を見せていると報告しています(ワールド・アニマル・プロテクション(英語))

PETAアジアも、インドネシアの農園で、傷を負ったジャコウネコが汚れた金網の檻に入れられている様子を記録しています(PETAの報告(英語))。このような環境でつくられたものを「良いもの」と呼ぶのは難しい、と考える学者や消費者は少なくありません。

ハラーム・リ・ガイリヒ:外的な理由で許されなくなるもの

イスラム法には、それ自体は許されているものが、外的な理由によって禁じられるという考え方があります。これをハラーム・リ・ガイリヒと呼びます。たとえば、水そのものはハラールでも、盗んだ水を飲むことは許されません。同じように、豆そのものが清められたとしても、生産の過程に動物への残酷な扱いが含まれていれば許されない、という議論があります。

表示の偽りという問題

さらに問題を複雑にしているのが、表示の偽りです。前述のPETAの報告によると、檻の中のジャコウネコから得た豆であっても、袋に「野生100%」と書くことをためらわない生産者がいたといいます。パッケージの言葉をうのみにしないためのコツは、ラベルにだまされないためのチェックポイントで紹介しています。

結局、コピルアクはハラールなのか

法的な判断は「条件付き」で、その条件は確かめにくい

インドネシアやマレーシアのファトワは条件付きで許容していますが、豆が形を保っていたか、十分に洗われたかを、飲む人が自分で確かめるのは簡単ではありません。認めない学者もいる以上、疑わしいもの(シュブハ)として控えるのが最も慎重な選択だ、という考え方にも十分な理由があります。

倫理面の大きな壁は、檻飼育にある

豆の扱いをめぐる議論以上に重いのが、檻飼育の問題です。檻で飼育したジャコウネコからつくられたものは、豆の状態にかかわらず、「タイイブ」の基準を満たさないと考えるべきでしょう。コピルアクはハラールかという問いに向き合うなら、まず檻飼育のものを避けることが前提になります。

それでも飲むなら、確かめたい4つのこと

  • 野生回収であること: 自由に暮らす野生のジャコウネコから回収したことを、書類で示せるかどうか。
  • 豆の状態と洗浄: 殻に包まれたまま形を保った豆を回収し、十分に洗浄しているかどうか。
  • 商品ごとのハラール認証: 認証が必要な場合は、ファトワではなく、その商品の認証書を確認すること。
  • 信頼する学者への相談: 最終的な判断は、ご自身が従う法学派や、信頼する学者の見解に照らして行うこと。

よくある質問

ハラールコーヒーとは?コーヒーそのものはハラールですか?

コーヒーは植物なので、豆そのものは一般にハラールと考えられています。ハラールコーヒーとして認証を受けた商品は、加工の工程や加えられた原料まで確認されたものです。フレーバーコーヒーや、ミルクなどを加えた商品は、原料を確認すると安心です。

ジャコウネコのコーヒーはハラールとして飲めますか?

インドネシアとマレーシアのファトワでは、豆が形を保ち、十分に清められていれば許されるとされています。ただし、認めない学者もいること、そして檻飼育には倫理面の大きな問題があることを踏まえて、ご自身で判断してください。

ヴィーガンの視点からは、どう考えられていますか?

ヴィーガンの間でも、野生回収のものを受け入れるかどうかで意見が分かれています。詳しくはヴィーガンの視点から考えた記事をご覧ください。

4つの確認ポイントに、書類でお応えします

当社の豆は、すべてインドネシア各地の森にすむ野生のジャコウネコが残したものを、当社のチームが拾い集めたものです。ジャコウネコを檻に入れて飼うことは、どの段階でも一切ありません。拾い集めた豆は、殻をつけた状態で何度も水を替えて洗い、乾かしたあとで殻を外します。洗浄から出荷までの工程も公開しています。野生から回収したことを裏づける書類は、認証のページに掲載しています。

ハラール認証の書類が必要な方は、ご注文前にご相談ください。ご用意できる書類の種類を、あらかじめお知らせします。ラインナップは、アチェ州のアチェ ガヨ ルワックやトラジャ地方のトラジャ ルワックを含む5種類で、価格は1kgあたり25米ドルから109米ドルまでです。ご注文前に味や状態を確かめたい場合は、サンプルもご用意しています。デポジットは100米ドルで、その後のご注文代金から差し引きます。条件はサンプルポリシーにまとめています。

コピルアクはハラールか。その答えは、条件をどう確かめ、どの見解に従うかによって変わります。私たちにできるのは、判断に必要な情報を隠さずにお見せすることです。最終的なご判断は、信頼する学者や宗教機関の見解に照らして行ってください。

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